ふむ...

やおういかんのぅ

 《けつを割る》を使って作文せよ

「ワトソン君、今度の事件はすこぶる厄介だ。だが、私は《けつを割る》つもりはないよ」
「もちろんだ、ホームズ。君ともあろう探偵がここまで来て《けつを割る》なんて考えられないよ」




問題の答えを考えてみた。多分これで合っているだろう。


《けつを割る》というのは「引き受けた仕事が能力を超えるので、仕事から逃げ出す」ぐらいの意味らしい。


ネットでいろいろ調べてみると、どうやらそのよう。が、とことん納得がゆくまでには至っていない。だいたいのところで、「仕事を放棄する」というほどの、余り芳しくない意味を持つ言い回しだ。


だから、こんな解答も許されるだろう。


「廊下の拭き掃除をしていたA君は、途中で《けつを割っ》て、どこかに遊びに行ってしまった」


さて、2点の疑問。一つは「けつ」とは何のことか、「尻」のことでいいのかという疑問。もう一つはそういう言い回しがどうして生まれたのか、「割る」は本当に「二つに割る」の「割る」でいいのかという問題。


ネットで調べるのだが、どうも今ひとつピンと来ない。しかし、それでも本当らしいのは「欠を割る」から来ているという説だ。


「割る」は「正直に全てを打ち明け、告げる」の意味があるという。「欠」の方は、どうもよく分からないけれど、「仕事上の能力の欠如、不足」のことを言うらしい。「能力不足」を「告げ知らせる」ことによって「仕事から手を引く」ことを《欠を割る》と言ったとか……。個人の技量が一番の問題になる職人の世界の言葉だったらしい。


職人たちが自分の技能不足を「欠」と呼んだというのは、まぁ本当らしくもある。


しかし、もしそういうことなら、《けつを割る》はなかなか男らしい、潔い面も見える言葉でこそあれ、「臀部が二つに割れている」とかの、身体的なことと関係があるような言葉ではさらさらないということになる。


……してみると、名探偵ホームズが「私はけつを割らないよ」と言っても、これは全然笑うような言葉使いではないのだ。

(日曜日)
[追記]
ただし、発音するときの高低アクセント、イントネーションも要注意だ。

「けつ(欠)を割る」の場合、「けつ」を「尻=けつ」のように低→高(音階で言えば「ド」→「レ」の感じ)、つまり尻上がり調子で発音してはいけない。「採決する」ことを「決を取る」と言うが、そのときの「決」ように高→低(「ド」→「シ」の感じ)で尻下がりに言うのが正解だろう。

土木関係の人が「けつを割る」と言っているのを二三度聞いたことがあるが、どのときも「尻(ケツ)を割る」のようなイントネーションで喋っていたので、「欠」は「尻(ケツ」としか聞こえなかった……。(゜д゜)