ふむ...

やおういかんのぅ

 のみならず


私もこれで猫の端くれなのだから、一度は漱石の「猫」を読んでみたいと思っていた。


なかなか暇が無かったのだけれども、それでも最近ようやく毎日少しずつではあるが新潮文庫のページをめくる時間が出来た。この文庫本はだいぶ前に買ったもので、カヴァーは白い猫が椅子の上に半ば寝そべってこちらを見ているやつだ。


さて、読み始めたものの、まぁ、漢字が多過ぎること。漢字、漢字、漢字。いくら漱石の特色といっても、こう漢字が多くては目も頭も疲れる。


「吾輩」猫が漢籍に精通しているらしいのは認めるとしても、これではちょっと……と言いたくなるな。


せっかくユーモラスな内容なのだから、漢字を減らして、もっと取っ付きやすい本にしたらどうなのでしょうか。漢字が多過ぎて、おかしさも、面白みも半減するように思われる。熟語は仕方がないとしても、助詞や接続詞にいちいち漢字を使わなくても良さそうなものを……。


そんな箇所はもう100以上あるが、中で最たるものが「加之」だ。


「のみならず」と読むらしい。平仮名で「のみならず」ではダメで、読者はどうしても漢字の「加之」を拝み奉らなければならないらしい。


漱石の原稿や原文に漢字があったとしても、もう時代が変わり、言語習慣も変わってきたのだから、いちいち原文に義理立てすることはないだろうに……。


……などと、愚痴をこぼしながら街を歩いていると、寒風の中、文句ひとつ言わずに静かに「猫」を読んでいる同族を見つけた。

(土曜日)