ふむ...

やおういかんのぅ

月は隈なきを

澤選手はもうピークを過ぎたね、などと話していると、A君が「何をばかなことを言っているんだ」と澤選手の弁護を始めた。

「積み上げてきた経験から勘が働いて、動きに無駄がない、瞬間的にまだ鋭い足技が冴える等々、なかなか味わいのあるパフォーマンスじゃないか」

「えー、味わいですか?」
「そう。今は残念ながら、若い時代のような持続的な突進力はもう期待できないだろう。でも、”花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは”という、これこそスポーツ観戦の妙味だよ」
「へぇ、そんなものですか……」

双ヶ丘の法師も何かの折に女人たちの競技を見たことがあったかも知れない。が、そうはいっても、負けている試合で、「ふむ、なかなか味わいがあるね」などと暢気なことを言っている余裕はなかろうけれども……。

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